研究支援AIを1研究室で試すには?文献整理の対象範囲と確認方法

文献候補が増えるたびに、書誌情報を表計算ファイルへ転記し、研究テーマに沿って分類し直す。こうした作業を減らしたくても、「研究支援AIを既存の文献管理ツールと併用できるか」「分類をどこまで任せてよいか」は判断しにくいものです。この記事では1研究室・1研究テーマの文献整理に対象を絞り、AIに補助させる作業、AIに渡すデータ、試行の進め方と評価の方法、相談の前に整理しておく項目を説明します。

AIに補助させる作業

最初から文献調査全体を置き換えるのではなく、手元にある文献候補の一覧を整える作業から考えると、試行の範囲が明確になります。対象にしやすいのは書誌情報の整理と分類案の作成です。たとえば登録済みの書誌情報から著者名・題名・掲載誌・発行年などを抽出して指定の形式に並べる案や、研究室で決めた分類項目に沿って候補を振り分ける案をAIに作らせます。

AIが作るのは下書きです。文献を採用するか除外するか、先行研究としてどう位置付けるかは、対象テーマの研究者が本文を確認して判断します。

AIに渡すデータと確認材料

AIに渡すのが書誌情報か、抄録か、本文のPDFかによって、権利や取り扱いの面で確かめることが変わります。試行を始める前に、何を入力するか、その情報をどこから取得したかを整理します。利用するAIサービスについては、入力したデータが学習に使われるか、ログとして保存されるか、削除の条件はどうなっているかを確認します。著作権や利用条件を含め、これらは研究室の責任者が関係部署と確認しておきます。最初の試行では、権利とサービスの条件を確認できたデータだけを使うのが安全です。

分類の根拠も、AIが出す説明だけに頼らないようにします。分類案ごとに、AIが参照した書誌項目や抄録の該当箇所を研究者が確かめられる形で出力させ、研究者はそれを分類基準に照らして確認します。根拠を確認できない文献や、判断に迷う文献は「未判定」として扱います。

AIが整えた一覧は、書誌情報がそろって見えても、取り違えや分類違いを含む可能性があります。確認しないまま共有の一覧にためていくと、誤った分類が後の調査に残ります。試行の段階から、一覧の中で「未確認」と「確認済み」を区別できるようにしておくことが重要です。

試行の範囲・期間・確認担当者

試行を始める前に、対象とする研究テーマと文献の件数、試行の期間、AIの出力を確認する研究者、続けるかどうかを判断する基準を決めておきます。研究室の責任者が入力するデータと件数を決めておくと、確認に必要な時間や運用上のリスクを見積もれます。実際に文献を扱う研究者は、いまどの項目の転記や分類に手間がかかっているかを確かめておきます。整理した一覧を何に使うかも共有しておけば、機能を増やす前に、どのような出力形式が必要かを判断できます。あわせて、研究室の責任者は確認する研究者を置ける体制かどうかも判断しておく必要があります。

手作業と比べる評価項目と継続の判断

試行中は現在の手作業と比べられるように、次のような項目を記録します。

  • 書誌情報を修正した件数
  • 分類案を修正した割合
  • 1件あたりの確認時間
  • 未分類や重複の件数

比べる基準にするのは、研究者が確認したあとの分類です。期間の終わりに記録を振り返り、本導入に進むか、改善しながら試行を続けるか、中止するかを判断します。どの項目がどこまで改善すれば導入するかという目標は、研究室ごとに設定します。研究者が分類案を直したときは、その理由も記録できるようにしておきます。数値とあわせて、確認の手順が負担になりすぎず続けられそうかも、確認を担当した研究者と振り返ります。

既存ツールとの連携

研究業務にAIを導入するときは、現在の作業環境を残したまま試せるかが実務上の論点になります。まず利用中の文献管理ツールや表計算ファイルに、どの項目がどの形式で保存されているかを確認します。AIが作った抽出案は、担当研究者が既存の一覧へ取り込む前に、元データとの対応と空欄・重複を確かめます。出力が修正しやすい形式か、これまでの管理方法に戻せるかも見ておきます。自動連携が必要かどうかは、こうした手作業での試行を踏まえて判断しても遅くありません。連携の方法は、研究室の責任者が関係部署と確認します。

大学・研究機関向けの開発経験

京都エンタテインメントワークスは大学・研究機関向けに、研究者が記録や分析結果を確認・編集しながら活用するアプリ・Webシステムを開発してきました。たとえば京都大学向けのWalkieLoggerは、文字起こしの結果を研究者が確認・編集・タグ付けし、分析に使える形で出力するシステムです。文献整理の試行でも、AIの出力を研究上の結論として自動確定せず、研究者が元データと照らし合わせて確認・修正できる進め方を大切にします。

関連するサービスはAI for Scienceをご覧ください。データの取り扱いについての当社の方針は、情報セキュリティ基本方針にまとめています。

相談前に整理する4つの項目

ご相談の際は、次の4点をお知らせいただければ、入力の範囲、試作する機能、評価の方法を一緒に整理します。

  • 対象の作業と研究テーマ
  • 現在の文献管理ツールとファイル形式、扱うデータ(書誌情報・抄録・本文など)
  • AIの出力を確認する担当者
  • 希望の時期と、試行で確かめたいこと

仕様書がない段階でもご相談いただけます。研究者個人で導入を判断できない場合は、研究室の責任者や、研究支援・情報セキュリティを担当する部署と共有するための論点整理からご相談ください。初回のご相談では実データは送らず、項目の例をお知らせいただくだけで構いません。まずは手間のかかっている作業を一つ挙げて、お問い合わせフォームからご連絡ください。