観光周遊を促すゲーミフィケーション設計

謎解き・デジタルスタンプラリーの企画・実装

「有名な観光スポットには人が集まる一方で、少し離れた商店街や文化施設まで足を運んでもらえない」「スタンプラリーを企画しても、スタンプを集めること自体が目的になり、地域の魅力を伝えきれない」。自治体やDMOの観光企画では、こうした悩みが起こりがちです。

観光におけるゲーミフィケーションは、単にポイントや景品を付ける施策ではありません。旅行者が地域を発見し、次に向かう理由を持ち、歩いた・解いた・見つけたという達成感を得て、旅の思い出を共有したくなる。その一連の流れを設計することが重要です。

謎解きやデジタルスタンプは、そのための有効な手段になり得ます。大切なのは、どの仕組みを採用するかよりも、「どの場所で、誰に、どんな行動を選んでほしいか」から体験を組み立てることです。

周遊を促す鍵は、「次の場所へ行く理由」をつくること

観光客に周遊してもらうには、地図上に施設を並べるだけでは十分ではありません。初めて訪れる人にとっては、移動時間や道順、立ち寄る価値が分かりにくく、「次はどこへ行けばよいか」を決める負担もあります。

そこで役立つのが、行動変容ゲームとしての設計です。たとえば、ある場所で得た情報が次の謎の手掛かりになる、地域の物語を追うことで自然に別のエリアへ進みたくなる、チェックイン後に短い演出とともに次の選択肢が現れる、といった仕掛けです。

利用者の画面では、訪問済みの場所が地図やコレクションとして少しずつ埋まり、次の目的地までの目安やミッションが分かります。到着時にはスタンプ獲得、物語の進展、音やアニメーションによる即時フィードバックが返る。この小さな反応の積み重ねが、「もう一つ進めてみよう」という気持ちを支えます。

目的に合わせて選ぶ、観光ゲーミフィケーションの仕組み

観光施策にゲーミフィケーションを取り入れる際は、要素を多く盛り込むほどよいわけではありません。地域の回遊課題や参加者の特性に合わせて、中心となる仕組みを絞る必要があります。

デジタルスタンプ:立ち寄りを分かりやすく可視化する

デジタルスタンプは、幅広い年代に説明しやすく、複数地点への訪問を促したい場合に向いています。スタンプを単なる収集対象にせず、各地点の発見を記録する「旅のアルバム」として見せると、体験に意味を持たせやすくなります。

一方で、訪問順が自由すぎると、周遊ルートが分散しすぎたり、途中で参加意欲が途切れたりすることがあります。近隣の立ち寄り先を提案する、集めた数に応じて短いストーリーを開放するなど、次の行動につながる設計が有効です。

謎解き・ミッション:地域の物語と移動を結び付ける

歴史的な町並み、伝承、食文化、産業など、地域固有の魅力を深く伝えたい場合は、謎解きやミッション型の体験型ツアーが適しています。「この建物の意匠を探す」「店主に聞いて分かる言葉を入力する」といったミッションは、受け身の見学を能動的な探索に変えます。

ただし、謎が難しすぎると移動が止まり、簡単すぎると地域を見る理由が薄れます。ヒントを段階的に出す、答えられなくても先へ進める救済導線を用意するなど、観光のテンポを損なわない難易度調整が欠かせません。

位置情報と即時フィードバック:到着の瞬間を体験にする

位置情報を利用すると、指定エリアへの到着をきっかけにスタンプや演出を表示できます。QRコードの読み取りと比べて操作を減らせる場合がある一方、屋内外の通信状況や位置精度、端末の設定による影響を考慮する必要があります。

位置情報の取得には、利用目的、取得範囲、保存の有無などを分かりやすく伝え、必要に応じて同意を得る設計が重要です。QRコード、キーワード入力、GPSなどを組み合わせ、現地環境に合った参加方法を選ぶとよいでしょう。

架空の活用例:港町を巡る「失われた航海日誌」

例えば、これは架空の活用例ですが、港町の中心部と周辺エリアを巡る謎解き企画を考えてみます。参加者はスマートフォンのWebコンテンツを開き、失われた航海日誌を復元するという物語を進めます。

最初の観光案内所では導入ミッションだけを提示し、その答えが旧市街の建物へ向かうきっかけになります。建物の装飾や展示から手掛かりを見つけると、画面上には日誌の一部とデジタルスタンプが追加されます。次の目的地は、混雑状況や営業時間を踏まえて複数候補から選べるようにします。

飲食店では、注文を強制するのではなく、地域の食材にまつわる任意ミッションを用意することもできます。全問正解だけをゴールにせず、訪問した場所や選んだルートに応じて異なる旅の記録が完成する設計なら、時間や興味が異なる参加者も、自分なりの達成感を得やすくなります。

このように、周遊、滞在、地域理解、共有を一つの体験にするには、コンテンツ、画面UI、地図、判定方法、運用導線を別々に考えないことがポイントです。

京都エンタテインメントワークス株式会社では、商店街を歩きながらARで謎を探す「九十九ノ語(つくものがたり)」を企画・開発し、地域の店舗や物語をゲーム体験に組み込んできました。また、GPSとARを使って観光スポットを巡り、ご当地キャラクターとの写真をアルバムとして集める「キャラめぐり」では、ルートに応じたコンテンツやクーポンも実装しています。こうした実績をもとに、周遊させることだけでなく、現地で何を発見し、どのような旅の記録を持ち帰ってもらうかまで含めて設計します。

実装前に決めたい5つのこと

  • どのエリア・施設へ誘導したいのか。混雑を避けたい場所や、見つけてほしい地域資源も整理します。
  • 参加者にしてほしい行動は何か。訪問、鑑賞、会話、購買、予約などを区別して考えます。
  • 誰が使うのか。日帰り客、宿泊客、ファミリー、海外からの旅行者などで、所要時間や説明、多言語対応は変わります。
  • 現場で誰が運用するのか。問い合わせ対応、景品交換、コンテンツ更新、通信不良時の案内まで含めて設計します。
  • 何を成果とするのか。参加者数だけでなく、誘導対象への到達、複数エリアの訪問、滞在、クーポン利用など、周遊施策の目的に合う指標を決めます。

「周遊を促せたか」を判定する指標を決める

デジタルスタンプラリーや謎解きは、参加者数やスタンプ取得数だけでは成果を判断できません。もともと人が集まる観光スポットだけでスタンプが集められた場合、参加者が多くても周辺エリアへの誘導にはつながっていない可能性があります。

施策の目的に合わせて、例えば次の指標を設定します。

  • 特設ページを開いた人のうち、最初のミッションを開始した割合
  • 1地点目から2地点目へ移動した割合
  • 参加者1人あたりの訪問地点数
  • 誘導したい商店街や文化施設への到達率
  • エリアをまたいで周遊した参加者の割合
  • 地点別、ミッション別の離脱率
  • クーポン利用、予約、購買など地域事業者につながる行動
  • 体験後アンケートによる地域理解、満足度、再訪意向

実施前には、過去の類似企画や通常時の来訪状況など、比較に使える基準も確認します。位置情報や行動ログを取得する場合は、必要なデータだけを収集し、利用目的や保存期間を参加者に分かりやすく示すことも必要です。

こうした指標を先に決めておくことで、必要な画面、チェックイン方法、管理画面、ログの項目を具体化し、公開後の改善にもつなげやすくなります。

京都エンタテインメントワークス株式会社では、観光周遊施策の企画やプロトタイプ開発をご相談いただけます。対象エリア、誘導したい施設・行動、想定参加者、実施期間を伺い、体験フロー、判定方法、画面構成、運用・効果測定まで整理します。仕様書がない段階でもご相談ください。
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